治療院の受付やパート施術者として、扶養の範囲内で働きたいというスタッフも多くいらっしゃいます。「年収の壁」と一口に言っても、税制上の壁と社会保険上の壁は別のルールで、しばしば混同されがちです。それぞれの基準を正しく理解しておくことが、スタッフとの信頼関係にもつながります。パートスタッフの扶養に関する基本的な考え方と、治療院として意識しておきたいポイントを、実際の年収の壁の基準とあわせて整理していきます。
令和8年分からは、所得税・住民税の年収の壁が引き上げられます。最新の基準額は「令和8年分の年収の壁はどう変わる?」でご確認ください。以下では、税制上の壁と社会保険上の壁の基本的な考え方を解説します。
税制上の壁と社会保険上の壁を比較する
税制上の扶養(103万円・150万円の壁)
配偶者の年収が一定額を超えると、本人の所得税が発生したり、世帯主の配偶者控除・配偶者特別控除の額が段階的に減っていったりします。いわゆる「年収の壁」と呼ばれるラインで、金額は税制改正により変動することがあるため、最新の基準を確認することが大切です。
社会保険上の扶養(106万円・130万円の壁)
年収が一定額を超えると、配偶者の扶養から外れ、本人が社会保険料を負担する必要が出てきます。事業所の規模や労働時間・日数によって基準が異なるため、雇用契約を結ぶ際にあらかじめ確認しておく必要があります。106万円の壁は、勤務先の従業員数など一定の要件を満たす場合に適用される基準で、要件を満たさない勤務先では130万円が基準になります。この基準は法改正によって適用範囲が広がってきているため、開業時点では対象外だった治療院も、スタッフが増えるにつれて対象になることがあります。
治療院側が把握しておくべきこと
パートスタッフ本人が扶養内で働きたいという希望を持っている場合、シフトの組み方によって、意図せず扶養の範囲を超えてしまうことがあります。事業主側でも、おおよその年収見込みを把握しておくことが望ましいです。特に、繁忙期に急なシフト増を依頼する場合は、年収の壁に近づいていないかを事前に確認しておくと、スタッフとのトラブルを防げます。
年収の壁を意識した給与設計の考え方
時給を上げるとスタッフのモチベーションにつながる一方、扶養内で働きたいスタッフにとっては、労働時間を減らさざるを得なくなることもあります。時給の見直しと同時に、扶養を意識しているスタッフには労働時間の調整を提案するなど、給与体系全体を見渡しながら考えることが大切です。給与設計全体の考え方は「治療院の給与設計で失敗しないポイント」もあわせてご覧ください。複数のパートスタッフを抱える治療院ほど、この調整の重要性は増していきます。院全体のシフトバランスも踏まえて検討しましょう。
扶養にこだわらない働き方の提案も
スタッフによっては、扶養の範囲にとらわれず、しっかり稼ぎたいという希望を持つ人もいます。社会保険に加入することで、将来の年金額が増える、傷病手当金などの保障が手厚くなるといったメリットもあるため、扶養内にこだわらない働き方をあえて提案することも、スタッフの将来を考えたひとつの選択肢です。一人ひとりの希望をヒアリングしたうえで、シフトや契約内容を調整することが、スタッフの満足度にもつながります。家族への給与を経費にする専従者給与の考え方は「家族への給与は経費になる?」で、雇用契約と業務委託の違いについては「給与と業務委託の違い」で詳しく解説しています。
よくある質問
Q年の途中で扶養の壁を超えそうな場合、どう対応すればよいですか?
Q複数のパートスタッフを雇う場合、社会保険の加入基準はどう管理すればよいですか?
パートスタッフの扶養に関するルールは複雑で、頻繁に見直しが行われています。治療院専門の税理士に相談すれば、最新の制度を踏まえた雇用管理をサポートできます。スタッフの雇用形態を見直すタイミングで、一度まとめて確認しておくことをおすすめします。