治療院経営において、スタッフの定着は経営の安定に直結する重要なテーマです。せっかく育てた施術者が独立や同業への転職で辞めてしまい、また一から採用・教育をやり直す、という相談は本当に多く寄せられます。税務・経営の視点から見た、スタッフが辞めにくい治療院づくりのポイントをご紹介します。

歩合給の設計は「何に対して払うか」を明確にする

治療院の給与体系でよくあるのが、売上に対する歩合給の設計です。ここで納得感を左右するのは、歩合の対象を「総売上」にするか「技術料部分のみ」にするかという設計です。材料費や回数券の割引分まで含めた総売上で歩合を計算すると、スタッフから見て自分の頑張りと支給額が結びつきにくくなります。技術料(施術料)部分を基準にする、新患担当と指名担当で歩合率を分けるなど、何に対して歩合を払っているのかが伝わる設計にすることが、納得感につながります。

評価基準を数字で見える化する

感覚的な評価ではなく、新患担当数、リピート率、指名率などの数字を評価に組み込むことで、スタッフ自身も自分の頑張りを客観的に把握できるようになります。

教育・資格取得支援と経費処理

技術セミナーへの参加費や、上位資格の取得支援は、スタッフの成長実感につながり、定着率の向上に寄与します。会社が費用を負担する場合、業務に直接関連するセミナー参加費は福利厚生費や研修費として経費計上できますが、資格取得そのものの受験料や講座費用を会社が負担する場合は、対象者を役員・特定の人だけに限定してしまうと給与とみなされることがあります。全スタッフを対象にした制度として整備しておくと、税務上もすっきりと処理できます。

社会保険・福利厚生の整備

法人化や社会保険の加入は、スタッフにとって働きやすさや安心感につながる要素です。採用競争が激しい業界だからこそ、こうした制度面の整備が定着率に影響することもあります。個人事業のままだと社会保険に加入できない場合があり、将来を考える施術者ほど、法人化された治療院を就職先として選ぶ傾向も見られます。

独立志向のスタッフとどう向き合うか

治療院業界は、施術者自身が将来的に独立を考えているケースが少なくありません。独立を止めることよりも、のれん分けや業務委託への切り替えなど、独立後も何らかの形でつながりを持てる制度を用意しておくことで、円満な卒業と、患者・ノウハウの急な流出を防ぐことにつながります。あらかじめ就業規則や契約書で、退職後の競業避止に関するルールを整理しておくことも、トラブル防止の観点から重要です。

経営の安定がスタッフの安心につながる

そもそも経営が不安定な治療院では、スタッフも将来への不安を感じやすくなります。数字に基づいた安定的な経営を続けることが、スタッフの定着の土台になります。

よくある質問

Q歩合給を導入すると、社会保険料の計算はどうなりますか?
歩合給を含めた月々の報酬総額が標準報酬月額の算定基礎になります。歩合の変動が大きいスタッフは、年に一度の定時決定だけでなく、大幅な変動があった際の随時改定の対象にならないか、あわせて確認しておく必要があります。
Q資格取得の費用を会社が負担した場合、スタッフの給与所得になりますか?
業務に必要な技能の習得であり、全スタッフを対象とした制度として運用していれば、給与課税されないケースが一般的です。ただし特定の役員だけを対象にするなど、恣意的な運用と見られる場合は給与とみなされることがあるため、制度化しておくことが大切です。
Qのれん分け制度をつくる場合、税務上気をつけることはありますか?
のれん分けにともなう加盟金や患者紹介の対価を受け取る場合、その性質によって売上や雑収入としての計上が必要になることがあります。制度設計の段階で、契約書の内容とあわせて税務上の扱いを確認しておくと安心です。

スタッフの定着は、給与制度・教育投資・経営の安定、これらが組み合わさって初めて実現するものです。治療院専門の税理士は、数字の面からこうした制度設計もあわせてサポートしています。

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