「生命保険に入れば節税になる」という話を耳にしたことがある先生も多いと思いますが、その仕組みを正しく理解している方は意外と少ないのが実情です。個人事業と法人とでは生命保険の税務上の扱いが大きく異なり、この違いを理解しないまま加入すると、期待していたほどの節税効果を得られないこともあります。個人契約・法人契約それぞれのポイントを整理しながら、生命保険による節税の実際の考え方を見ていきましょう。

個人契約の生命保険料控除

個人事業主が自分自身のために契約する生命保険は、支払った保険料に応じて「生命保険料控除」を受けられます。ただし、控除額には上限(一般生命保険料・介護医療保険料・個人年金保険料それぞれ最大4万円、合計最大12万円)があり、大きな節税効果を期待できるものではありません。

法人契約の場合

法人成りしている場合、契約内容によっては、法人が支払う保険料の一部または全部を損金(経費)として計上できることがあります。保険の種類や解約返戻金の設計によって、損金算入できる割合は大きく異なります。

解約返戻率損金算入の目安
50%以下全額損金
50%超70%以下一部資産計上(段階的)
70%超85%以下多くを資産計上
85%超大部分を資産計上

解約返戻率が高い商品ほど、損金算入できる割合が小さくなる仕組みになっており、返戻率と損金割合はトレードオフの関係にあります。「全額経費になる」という説明だけで判断せず、実際の返戻率と損金算入割合を確認することが大切です。

節税目的だけで加入するリスク

過去には、高額な保険料を全額損金にできる保険商品が節税策として広まりましたが、税制改正により、こうした商品の多くは損金算入割合が制限されました。「節税になるから」という理由だけで、保障内容を十分検討せずに加入するのはおすすめできません。保険会社の営業トークをそのまま信じるのではなく、契約前に税理士へ相談し、実際の損金算入割合を確認することが大切です。

本来の目的とのバランス

生命保険は、本来、万一の際の保障や退職金準備のための手段です。節税効果だけを追い求めると、実際に必要な保障が不足したり、解約のタイミングで思わぬ税負担が生じたりすることがあります。特に、解約返戻金がピークを迎えるタイミングを逃すと、想定していたほどの受取額にならないこともあるため、解約時期の見極めも重要なポイントです。

役員の退職金準備としての活用

法人契約の生命保険は、役員の勇退時に解約し、退職金の原資として活用する設計がよく用いられます。退職金は、給与所得よりも税負担が軽くなる仕組みがあるため、法人に利益を貯めておくよりも、生命保険を経由して退職金として支給する方が、トータルで有利になるケースがあります。ただし、退職金の金額設定には妥当性が求められるため、事前に税理士とシミュレーションしておくことをおすすめします。功績倍率などの一般的な計算方法をもとに、無理のない金額を設定することが、税務調査での否認リスクを避けるポイントです。

個人事業主が老後資金対策として検討したい制度

法人契約の生命保険のような節税効果を個人事業主が求める場合、小規模企業共済やiDeCoといった制度もあわせて検討する価値があります。掛金が全額所得控除になる点は、生命保険料控除よりも節税効果が大きくなりやすいポイントです。詳しくは「iDeCoは節税になる?」で解説しています。

よくある質問

Qすでに加入している保険が節税に有効かどうか、どう確認すればよいですか?
保険証券や契約のしおりで、解約返戻率の推移や損金算入割合を確認できます。契約内容が複雑で分かりにくい場合は、税理士や保険会社の担当者に確認することをおすすめします。
Qスタッフのために加入する保険も、節税効果はありますか?
スタッフを被保険者とする福利厚生プランの保険は、一定の要件を満たせば保険料を福利厚生費として損金にできる場合があります。全従業員を対象にするなど、公平性の要件を満たす必要があるため、導入前に税理士に確認することをおすすめします。人材の定着率向上にもつながる制度として検討する治療院も増えています。
Q法人契約の保険を解約すると、解約返戻金にも税金がかかりますか?
解約返戻金は法人の益金(収益)として計上され、法人税の対象になります。退職金の支払いなど、大きな損金が発生するタイミングと解約時期を合わせることで、税負担を平準化する活用方法もあります。計画的に解約時期を設計しておくことが、この活用法の重要なポイントです。

生命保険を活用した節税は、保障内容と税務上の取り扱いの両方を理解したうえで検討する必要があり、契約前の比較検討が何より重要です。治療院専門の税理士やファイナンシャルプランナーと相談しながら、無理のない設計を心がけましょう。

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